人工知能研究者の黒川伊保子さんの一冊。
たまに聴くラジオでこの本の一部をお話していて気になったので拝読しました。
「はい」「ええ」など同じ意味でも届く気持ちは語感で全く変わります。
この本は「ことば」の感性に着目して、「語感分析」の成果をまとめた一冊です。著者は人工知能学者としてAI開発などを行なっていた時に、質問のたびに「はい」ばかり返信してくるAIが冷たく感じるとクレームがついたことで「ことば」の感性を研究し始めたそうです。人間が無意識にコントロールしている語感(「ことば」の感性)の世界があります。その語感を解明してコンピュータ上で実装したいと考えたそうです。
ちょうど私はある方の曲で、歌詞が “Ah” のみの歌があり、”Ah” のみにも関わらず多くの方が感動しておられることが気になっていました。もちろん声や曲の良さもあると思いますが、この “Ah” がもし “Oh” だったら、また別のリアクションが多かったかもしれません。語感が気になっていたタイミングでラジオを聴き、感性の存在を知りました。
例えば、用事があって部下を呼んだ時、「はい」と答えてもらうと信頼感とスピードを感じて安心します。
しかし、空冷効果のあるH音ハは重ねると冷たさが募ってきます。はい、はい、言い過ぎて怒られるやつですね。
会議直前、印刷した資料が一部足りず、部下に「急いで印刷してきて!」と言ったときに、
部下が「申し訳ございません」、「すみません」、「ごめんなさい」のどれを言うかで上司が受ける感覚が違います。
「すみません」のS音は喉・口腔内を速く走り抜けていきます。
(Su)涼しい・(Sa)寒いも同じ。冷たさ・速さを感じる音です。急いでいる状況ではS音で始まる「すみません」と言って走り出すことが最も上司をイライラさせません。
また「申し訳ございません」「ごめんなさい」は、とにかく急いでいる状況でこれらを言うと、グズグズしているように思われてしまうこともあります。
逆に丁寧にゆっくり対応してほしい時に「すみません」は速く軽く感じるので逆に相手を怒らせてしまいます。
発音の体感は、小脳にフィードバックされます。
口腔が高く上がれば「高さ」を感知して、息が滑り出せば「スピード」を感知します。「高い」の「た」は五十音の中で発音する際の上顎の高さが最も高い音です。小脳はフィードバックされた体感からイメージを構成しています。
ふと思いましたが、よく言霊なんて聞きますね。
先ほど示した涼しい・寒いはS音。S音は口腔表面を冷やして通り過ぎる風です。
またK音にも空冷効果があります。凍える、coolも発音することで口腔が冷えます。
さらに唇が凍えるほど冷たいのがF音です。freeze、フーフー(冷ます時)、夫婦とか…
最近暑いですが、あえて「涼しい」や「冷たい」と言ってみるとよいかもしれません。
私事ですが、以前接客業をしていた時に、お客様から値段交渉を受けた際のことを思い出しました。
私はまだ新人でしたので上司に聞いてからいくら下げるか決めなければなりませんでした。その時に「聞いてきますね」「確認して参ります」「相談して参ります」などと答えると、値下げできなかった場合にお客様に粘られたり怒られたりすることが多かったです。
しかし「交渉して参ります」と答えると、値下げできなくても一度も怒られたことはありません。
意味合いは少し違いますが、漢字二文字変えるだけで相手の態度は変わりました。
「交渉」はK音ですが、母音O「お」です。「お」は口腔内を丸くして相手を包み込む音です。あくまでもあなたの味方ですよ、みたいな感じが伝わるのかもしれません。「相談」はD音のブレーキが入っているからどこか隔たりがあるような…と考えました。
どの言葉が相応しいかは、時と場合によりますが、我々はかなり感性に左右されていますね。
最初の “Ah” についてです。「あ」は舌が口腔内のどこにもつかずリラックスして発音できる音です。
発音している本人も、聞いた人もリラックスできる音です。
安心、安全、ああよかった、ありがとう。
しっかり愛を伝えたい時は、速さの「すき」(S音+K音)じゃなくて、「あいしてる」が最適です。
また、人の名前や商品名、映画のタイトルにもこの語感は利用されています。街中やスーパーでもどんな名称のものがあるのかチェックしたくなります。
私は言葉や発音に悩んできた分、周りの人よりは言葉を気にして生きてきたかもしれません。
だから発する言葉を大事に扱いたいと思うこの頃です。
是非日常でも参考にしたいですね。
ああ、本日もありがとう。おやすみ。

